シノザキサトシ

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IHateCDS | menber of Kindan No Tasūketsu : sampler, synthesizer, guitar, vocal

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JAWS 19 : text by シノザキサトシ

JAWS 19 : text by シノザキサトシ

ロバート•ゼメキス監督のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されてから30年が経った。
1作目は過去へ、2作目は未来へ、3作目は再び過去へとタイムトラベルする物語だ。もともと1作で完結していたはずの物語は、ビデオ化された際、ラストシーンで入れられた「TO BE CONTINUED…」のテロップが発端となり、世界中のファンが続編を待望した。それに応えるかのごとく、2作目と3作目が制作されたのだった。そして2作目にあたる『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の物語設定は、1985年10月から2015年10月にタイムトラベルするというもので、いよいよここにきて、現在が物語の未来を追い越すことになったのだ。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』を改めて観ると、この未来は、いまこの現実の現在とは当然のごとく、ズレが生じている。中でもいくつか興味深いズレがあり、目を惹くもののひとつとして『ジョーズ』シリーズの19作目が上映されていることがあるだろう。ホログラムの3Dジョーズが主人公のマーティに食いつくシーンを憶えている人も多いと思う。スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作といわれる『ジョーズ』は75年に公開され、大ヒットし、この直後から、さまざまな亜流サメ映画、サメを他の動物に置き替えただけのアニマルパニック映画が制作され、誰しもがうんざりしつつも、いまだに性懲りも無く、手を変え品を変え、つくられ続けているのだが、現在、本家の『ジョーズ』シリーズは4作目にあたる『ジョーズ’87 復讐篇』で止まってしまっている。要するに『ジョーズ』シリーズ5〜18が空白のまま『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』は現在に来てしまったわけである。だからといって『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の未来をやはり空想のものだったと我々は悟ってはいけない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作を観て、胸をときめかせたものなら、誰でもこの未来は実在する未来として、いつまでも観ていたいのだ。マーティ達がこの世界のどこかで活躍していると信じているものにとって、この『ジョーズ19』も、もちろん実在している。タバコでも買いに出掛けたときにポッと思いついたような気もしなくもないこの無邪気な設定。それでも我々は、この空白の『ジョーズ』シリーズを5から18まで不眠不休で制作することになることに何一つ苦は感じなかった。それどころか、マーティがやって来る現在と同じ世界に生きていると信じて、映画と現実を繋げるのは、最高に粋な遊びと感じたのだ。では、これをつくることによっていったい現在に何か起こるのだろうか??何も起こらないかもしれない。だが、もしかしたら何か起こるかもしれない。そう考えると、何か起こるほうに賭けてみようではないか。どこかでばったりマーティに鉢合わせたとき、我々は彼にまず伝えることがある。それだけで充分じゃないだろうか。そういう気持ちの心構えこそがロマンなのであり情熱である。それを教えてくれたのは、当の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なのだから、もうなにも言うことはないだろう。

禁断の多数決 シノザキ サトシ

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REVIEW : BECK – Morning Phase

REVIEW : BECK – Morning Phase

 

ベックのニューアルバム『Morning Phase』を聴いていると、いろいろなことを思い出す。一聴すればわかると思うが、聴く側にある種の余裕を与えてくれる、そういう音なのだ。そして葬ったはずの過去の記憶も否応なしに蘇ってくるから大変だ。世界中にいるベックフォロワーの半分はこの体験をわかってくれるのではないかと思う。もちろん自分もベックフォロワーの一人だ。それは『Mellow Gold』を初めて聴いたときのことだ。これを聴いた瞬間、当時の自分はとんでもない大きな勘違いをした。作曲をしたこともないのに、これなら自分でもつくれると思い込んだのだ。ブレイクビーツに歌を乗っければいいんだ、と安直で滑稽な勘違い。しかし、そう思い込んだら自分でも止めようがない。そこでまず用意しなければならなかったものは、多重録音できる機材だった。金のない自分は知恵を搾った。親に『脳をリラックスさせることで頭の働きがすこぶる良くなるマシーン』が限定販売で格安で売っているから欲しいと偽チラシまで作って巧妙な嘘をついた。親がマシーンそのものよりも自分の頭の足りなさを自覚し、少しでも補おうと努力している姿勢に涙ぐんで、金を用意してくれたのだった。そうしてめでたく、6トラックまで録音できるハードディスクレコーダーを新品で手に入れることができたのである。さすがにサンプラーまでは買えなかったので、ドラム教則本に付いているCDのドラミングの音をひとつひとつ継ぎはぎして組んだ。まる一日かけて出来た3分04秒のブレイクビーツはグルーヴもへったくれもないリズム感0以下のグダグダビーツだったが、これも『ベック的、Mellow Gold的』と自分で解釈してしまったから都合がいい。その飽くまで『Mellow Gold的トラック』の上に、家にあったカラオケ用のマイクで、でたらめな英語でラップやら歌を吹き込んで、とうとう処女作を完成させたのだった。オマケに宅録ではどうしても生じてしまう劣悪なノイズも『Mellow Gold的ローファイサウンド』と解釈すればなお良しとなった。ここまでくるとポジティブ・シンキングも一種の狂気なのかもしれないが、曲がりなりにも曲ができてしまったことは本当です。だが『Morning Phase』はどうだろう。さすがにこの世界を真似しようとは微塵も思わない。ベックはなんだか遠いところへ行ってしまった。もちろん良い意味で。ただ委ねればいい、そんな感じだ。1曲目、厳粛なイントロが終わるとすぐに2曲目『Morning』が始まる。とにかく聴いてもらいたい。こんな朝を迎えれるのなら、なんて素晴らしいことだろう。自分のただただキツいだけの朝のイメージとは真逆の世界がここには広がっている。自分が求めていた朝はこれなのだ。この音が自分の住む世界だとしたら、5時にはパチッと目が覚めて、朝日の到来をゆっくり紅茶でも飲みながら楽しむことができただろうに。自分の朝は、分単位で時間を報告してくるあの投げやりなハイテンションのテレビ番組と共にあるものでは決してない!どの局でもいいから朝5時に『Morning』をコンセプトにした番組を考えて欲しいものだ。そんな番組が出来たとして、わざわざ5時に起きて見ることは絶対にないと思うが、要はそういう番組が存在してることで安心して寝ていられると言うこと。5時に目が覚めて『お、いまあれやってるな、よしよし、もうひと眠りしよう』みたいな安堵感が欲しいのだ。社長さん、テレビは見るだけじゃない、そんな番組あってもいいかもしれませんよ。そしてアルバム『Morning Phase』はどうなったかと言うと、どうにもならない。おだやかな川の流れのように淡々と進行している。そしてまたひとつ思い出した。夜も明けだす頃、部屋で独りぶっ飛んでた自分は、遊ぶのにも疲れて、なにげにテレビを点けて放心状態でザッピングしていた。すると延々とアメリカのどこかはわからないが、誰もいないビーチやら地平線に聳える山などの風景をただ延々と流している番組に目が止まった。原住民の談笑してる姿や馬、なにもないまっすぐな一本道をサイクリングチームが縦列で走ってるとこなどが順々に映る。だが、そこにこれといって派手な演出や大きな物語はなにもない。あれは完璧なCHILL OUT番組だったと思う。その番組に勝手にタイトルを付けるなら『まぁよしとしようじゃないか、そんなこと』だ。いや、いま思い返すと間違いなくそのメッセージが隠されていたと思う。これこれこれ!朝5時にやる番組!なんだ、どこかのクリエイターが自分の考えてるコンセプトをすべて組み込んで作っていたじゃないか。ベックがこの番組を見てなにかしらヒントにしていた可能性だってある。そういうことで『Morning Phase』を聴きたくなるときが、これからの人生の中で何度か現れるような気がする。それはいろんな意味で大きな出来事があった数週間後だ。『結婚』かもしれないし『銀行強盗』かもしれない『ジャンボ宝くじに当選』かもしれないし『亡命』かもしれない。失恋したとき『まぁよしとしようじゃないか、そんなこと』を録画しておけば良かったと悔やんだことを教訓に『Morning Phase』は銀行強盗したときの為に自分の側に置いておこうと思う。

文章・シノザキサトシ (禁断の多数決)

禁断の多数決 – Totally Confused (BECKのカバー)
※無料ダウンロードできます。

KINDAN ZINE 001 : Liner notes

KINDAN ZINE 001 : Liner notes

JR原宿駅から明治通りに向かって表参道を下っていくと、Apple社の最新端末が発売される度に、報道番組に取り上げられるソフトバンクショップが左手に見えてくる。そこを過ぎるとすぐに、人ひとり通るのがやっとの路地がある。そこに入って10mほど歩くと、また幅の狭い路地が右に現れ、そこをさらに進んでいくと、だんだん谷底にいるような妙な暗さになり、そのうちにトンネルへ入ったような闇になる。かろうじて光が射しているほうを目指して歩いていき、なんとか抜け出ると、そこには地平線が見える砂漠が広がっているのだ。自分はこの感動を共有したくて、あらゆる友人におもしろい場所だから行ってみろと勧めても、最初の路地は見つけられるが、くねくねと歩いているうちにいつのまにか竹下通りのほうに出てしまい、そんな異国な雰囲気の場所へはたどり着けないと口を揃えて言う。
自分は毎日が暇なので、昼時に原宿周辺にある適当なコンビニで弁当を買って、ここに来ては誰もいない殺風景な景色を眺めながら弁当を食べるのが数少ない楽しみのひとつなのだ。ゴミは持ち帰らない主義なので食べ終わると空容器は放置して帰るのだが、不思議と次に来たときには容器は無くなっている。それにしてもここはいつも薄暗くて昼なのか夜なのかよくわからない。遠くにピラミッドのようなものが見えるが、歩いていくにはかなり時間がかかりそうなので行ったことはない。
ある日、ローソンで幕の内弁当を買っていつものように食べていると1人の女が目の前に現れた。痩せているが若くて肌が恐ろしいほど白い。フードの付いた絹のようなものを一枚纏っているだけで、裸足だった。ここで人と会ったのは初めてだ。女は黙って幕の内弁当を見つめている。唐突な出来事に動転してしまった自分は考えもなしに話かけた。「ここは渋谷区なんですかね?代々木公園ではないでしょうし、不思議な場所ですね」女は理解しているのかいないのか、ゆっくりと頷いて、自分に向かって手を差し出した。自分はヨコシマなことを考えて、弁当を慌てて空にしてそのまま地面に放置し、立ち上がった。すると今度は女はしゃがんで、空になった弁当の容器をそっと手に取った。容器をまるで自分の飼い猫のように抱いて上蓋を優しく何度も撫でている。その姿に魅かれていると、いつのまにか自分と女は宮殿のような場所に移動していた。広い空間にはステージがあり、様々な楽器が並べられている。ドラムセット、キーボード、ギターにベース、タッチパネルで操作すような機材、和太鼓、ほら貝まであった。頭を混乱させながらそれらを眺めていると、女に袖を掴まれグッと胸元に引っ張られた。女の大胆な行動に下半身はインディペンデント状態で抑制不能に入ろうとしている。しかし、女のジェスチャーをよく観察してみると、なにやら演奏してくれとねだられているようだった。自分は演奏できないとジェスチャーで返すと、女は寂しそうな顔をした。その顔が美しく艶かしいがために、いまだインディペンデントであることを誇らしげにしている下半身もいる。こいつを落ち着かせるために、いろいろ真面目に考えてみた。自分以外の他所者がここで演奏したのは間違いない。機材には砂埃が溜まってるが演奏した日がいつなのか、何日前なのか、もしくは何年も前なのかはわからない。ステージの造りから考えると、大勢の人が鑑賞できるのがわかる。女は自分に演奏能力がないことを理解したのか、そっと自分の手を引き宮殿の奥へと案内してくれた。そこは何本も柱のあるさらに広い空間になっていた。その中心に大きな椅子に腰掛けたアイヌ人のような老人が座っているが、死んでいるように動かない。その老人の横には腰にリボンを巻いたダサいレオタード姿のスタイルの良い女が立っていた。
広い部屋の壁にはあらゆる形の弁当の空容器が立派に祀られていた。自分が割と好んで食べている、弁当の容器の形ばかりだった。捨てた容器はここに運ばれていたのだ。真正面には、ひときわ目立つパーティ用の空容器が祀られている。かなり大きい。しかしこれは自分が捨てたものではない。
レオタード女がインチキ臭い日本語で話しかけた。

「あなたは私達には到底手に入れることのできない神器をたくさん運んでくれました。過去にこの国に訪れた音楽家を再び招致するため、あなたを指導者として認定します。隣の女は音楽家全員招致後、あなたの妻としてこの国で一緒に暮らすことになります。この国に再び音楽が流れれば、人は自然と集まってくるのです。我々はそれを切に望んでいます。男の音楽家達はバンクーバーにいます。女の音楽家達はアムステルダムにいます。旅立つ前に、まずは協力者を集めなさい。その方法今から教えます。

竹下通り出口にあたる明治通り側を特殊なトラックで人が出られないようにせき止めなさい。そして竹下通りの入り口側からは、水を満タンに入れた特殊大型タンクローリーを数十台用意して、バケツをひっくり返すように次々と竹下通りに流し込みなさい。すると通りは『流れるプール』状態となり、有能な人物だけがここへ流れ着きます。」

そんなことが本当に可能なのか疑わしい限りなのだが、横にいる上目遣いの女を見ていると、なにか勇気のようなものが湧いてきた。
特殊大型タンクローリーなんてどうやって用意すればいいのか今は検討もつかないが、行動を起こす価値があるように思う。これに賭けよう。
下半身も自分ももう止まらない。これが女の力というものなのか。

いや、それよりも音楽の力だ、凄いのは。

 

文章・シノザキサトシ (禁断の多数決)


 

KINDAN ZINE 001 & captain beefheart
KINDAN ZINE 001 : Liner notes

『アラビアの禁断の多数決』
(特典『禁断の多数決 ZINE』収録)

【制作】AWDR/LR2

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